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なぜ中小企業の新卒採用は難しいのか?金沢の製造業が最終面接にレゴ®シリアスプレイ®を活用した理由

  • 7 日前
  • 読了時間: 12分
左に「判断基準は、勘。」などの日本語タイトル、右に木の工房で円卓を囲み会議する粘土風の人物像。暖色で穏やか。


「選考書類を見ても、この学生がうちの風土に合うのかわからない」


「面接では良さそうだったのに、入社したら印象がまったく違った」


「結局、最後は自分の勘で決めている」



石川県・金沢をはじめ北陸の中小企業の経営者から、こうしたお話をよく伺います。


中小企業では、採用の担当者がイコール社長という形になっていることがほとんどです。


そして一人の採用の失敗が、即座に会社の利益に直結します。


採用コスト、教育コスト、抜けた穴を埋める既存社員の負担、そして下がるモチベーション。人数が少ない会社ほど、一人の重みは大きい。



中小企業にとって、採用は死活問題です。



だからこそ、失敗したくない。


その一心で、金沢市のある製造業様は新卒採用の最終選考そのものをワークショップ形式に置き換えるという選択をされました。


この記事でわかること:

 中小企業の新卒採用が構造的に難しい理由/金沢の製造業様で実施した最終選考の具体的な進め方/通常の面接では見えず、この形式でこそ見えたもの。





中小企業の新卒採用が難しい、3つの構造的な理由


まず、なぜ難しいのかを正直に整理しておきます。


手段が悪いのではなく、それぞれの手段に見える範囲の限界があるという話です。



理由1:選考書類では、学生の適性も、風土との相性もわからない


エントリーシートや履歴書からわかるのは、学歴、経験、そして文章を整える力です。

そこから読み取れないものが、いくつもあります。


  • この学生が本当は何を大事にしているのか

  • 自社の風土に馴染めるのか

  • 既存のメンバーと、うまくやっていけるのか


特に中小企業では、この「既存メンバーとの相性」が決定的に重要です。

10人の会社に入る一人と、1,000人の会社に入る一人では、影響の大きさがまったく違います。

書類はそこを教えてくれません。




理由2:適性検査でも、「この会社の、このチームで」までは出てこない


適性検査を導入している企業も多いと思います。


性格傾向やストレス耐性など、一定の情報は得られます。


ただ、検査が示すのはあくまで一般的な傾向です


。「この会社の風土のなかで」「この上司のもとで」「この先輩たちと」力を発揮できるかどうかまでは、数値には出てきません。


自社の風土は、自社にしかないものです。汎用の指標では測りきれない領域が、必ず残ります。




理由3:面接は「準備してきた答え」との勝負になる


そして面接です。


学生は準備してきています。志望動機も、自己PRも、学生時代に力を入れたことも、就活サイトとOB訪問と生成AIによって磨き上げられている。これは学生が不誠実なのではなく、当然の努力です。


その準備された言葉の奥にあるものを、30分や1時間で見抜く。

これは相当に難しいことです。


結果として何が起きるか。

判断基準が、面接官の長年の勘と、その場の雰囲気になる。


長年の勘は、決して軽いものではありません。


何百人と面接してきた経験からくる直感には、確かな価値があります。

ただ、それを検証してくれる人が社内にいない中小企業では、勘が外れたときに気づく仕組みがありません。


書類でも、検査でも、面接でも埋まらない部分がある。

だからこそ中小企業の新卒採用は難しいのです。

では、どうするか。判断材料そのものを増やす、という発想が出てきます。




実施内容: 金沢市の製造業様・新卒最終選考の進め方



出発点にあった、社長の二つの想い


ご相談をいただいたとき、社長は二つのことをおっしゃいました。


一つは、これまでと違う面接がしたいということ。


もう一つが、ただ面接するだけではなくて、本人の成長につながる面接がしたいということでした。


私は、この二つ目の言葉を伺って、この会社の採用はうまくいくだろうと思いました。


選考は本来、会社が学生を評価する一方通行の場です。


落ちた学生には何も残らないことが多い。


それを「来てくれた以上、その2時間が本人にとって意味のある時間になるように」と考える経営者は、そう多くありません。


そして実は、この姿勢こそが、学生の素の姿を引き出す最大の条件でもありました。試される場だと感じている人間は、鎧を脱ぎません。




ステップ1: 社長が手を動かして「ほしい人物像」を言語化する


いきなり当日を設計したわけではありません。


まず社長と一緒に、持ち味カードとレゴ®ブロックを使って「今年、どんな新人に来てほしいのか」という項目を洗い出すところから始めました。


ここが、この事例のいちばん重要な部分かもしれません。


学生に手を動かしてもらう前に、選ぶ側である社長が先に手を動かしているのです。


先ほど「判断基準が勘と雰囲気になる」と書きました。


その勘を否定するのではなく、勘のなかにあるものを言葉にして取り出す


持ち味カードとブロックを使った時間は、そのための工程でした。


社長の頭の中にあった「こういう人がうちに合う」という感覚が、具体的な項目として並ぶ。


すると当日、何を見ればいいのかが定まります。視点が決まっていない観察は、印象論にしかなりません。




ステップ2:

6名同時・2時間のワークショップとして最終選考を実施


最終選考に残った6名に対して、一人ずつ面接室に呼ぶ形ではなく、6名同時に、2時間のワークショップに参加してもらう形を取りました。


レゴ®シリアスプレイ®メソッドと教材を活用したワークショップとして設計し、学生には3つの問いに対して作品をつくり、それを言葉で語ってもらいます。


  1. この会社のことを、どういうふうに思うのか

  2. この会社で、どう成長したいのか

  3. この会社を通じて、世の中の人にどう貢献したいのか


志望動機、キャリアプラン、社会貢献意識。面接で必ず聞かれる項目です。


ただ、口頭で聞けば準備してきた答えが返ってきます。


手を動かして形にしてもらうと、そうはいきません。想定問答の外に出ざるを得なくなります。




ステップ3:

作品の共有時間こそが、本番だった


そして社長が最も多くの情報を得たのは、学生が自分の作品を語る時間ではなく、他の学生が語っているときの様子でした。


見ていたのは、次の3点です。


  • 他の人の話を聞く態度

  • 自分の作品の説明の仕方

  • 他の人への質問の仕方


一対一の面接では、この3つはどれも観察できません。


聞く相手は面接官しかおらず、質問する側は基本的に会社側だからです。


そして冒頭に挙げた「風土に合うか」「他のメンバーとうまくやれるか」という問いに、いちばん近い情報がここにあります。人とどう関わる人なのかは、人と関わっている場面でしか見えません。


入社後に発揮してほしいのも、まさにこの力です。


先輩の説明をどう受け取るか。自分の考えをどう伝えるか。


わからないことをどう聞くか。製造業の現場では、この3つがそのまま仕事の精度と安全につながります。





社長の言葉:

「ありきたりの言葉ではなく、本人の本質がよく見える」


終了後、社長からいただいた評価が、この取り組みの成果をそのまま表しています。


作品の共有のときに、他の人の話を聞く態度であったり、説明の仕方、質問の仕方を見ることによって、通常の面接とは違う、ありきたりの言葉ではなくて、本人の本質がよく見える。


「ありきたりの言葉ではなくて」という部分に、採用に関わる方なら深く頷かれるのではないでしょうか。


準備され、均質化した言葉の層を、どう突き抜けるか。手を動かして作品をつくるという工程は、その層を物理的に迂回する手段になり得ます。





なぜこの形式で「本質」が見えるのか


レゴ®シリアスプレイ®は、参加者がブロックで自分の考えを立体モデルとして表現し、それを言葉で語ることで、本人も気づいていなかった思考や価値観を可視化する対話手法です。


デンマークのレゴ社が開発し、構成主義(コンストラクショニズム)とフロー理論を土台としています。


進め方は、

①問いの設定 ②モデルの構築 ③ストーリーの共有 ④振り返りと探求

という4ステップの繰り返しです。


採用の文脈で効く理由は、大きく3つあります。


用意された答えが使えなくなる。 


作品をつくる過程で、その人が何から手をつけ、どこにこだわり、何を中心に置くかが表れます。答えの内容ではなく、考えるプロセスが可視化されます。



話すのが得意な人だけが有利にならない。 


この手法は「100%の参加者から、100%の貢献を引き出す」ことを前提に設計されています。

全員が必ず手を動かし、全員が語ります。声の大きい人が場を支配する構造が成立しません。無口だけれど現場で信頼を得るタイプの学生を、取りこぼしにくくなります。



学生の側にも、持ち帰るものが残る。

 

学生は2時間のなかで、この会社をどう見ているか、どう成長したいか、誰にどう貢献したいかを、自分の手と言葉で整理します。これは結果が不採用であっても本人に残ります。選ばれなかった学生に何を残せるかを考える会社は、地域の中で確実に評判をつくっていきます。





自社の選考に組み込むときの設計ポイント


この事例をそのまま真似れば同じ結果が出る、というものではありません。


押さえておきたい点を挙げます。


  • 社長自身が先に手を動かす工程を省かない  — ここを飛ばすと、当日の観察が印象論になります


  • 合否の唯一の基準にしない  — 書類・適性検査・従来の面接を補完する材料として扱う

  • 観察の視点を事前に定める  — 何を見るのかを、持ち味カード等で言語化しておく

  • 「試す場」ではなく「知り合う場」として説明する  — 安全性の設計が、素の姿を引き出す前提になります

  • 人数と時間の設計  — 今回は6名・2時間。人数が増えるほど一人あたりの観察密度は下がります

正直にお伝えすると、この手法はブロックを配れば成立するものではありません。


問いの設計と場の安全性のつくり方で、出てくるものはまったく変わります。





採用は入口。そのあとにも同じ手法が効きます


参考までに、選考後のフェーズでの実績もお伝えしておきます。


福井県の株式会社松浦機械製作所様では、内定者に対してレゴ®シリアスプレイ®を活用した研修を実施しました。「繋がりたい」「知りたい」「自信を持ちたい」という内定者の3つの欲求に応え、入社前の不安払拭と内定辞退防止を狙ったものです。ご担当者からは「全員が期待を上回る楽しさ、そして学びを感じることができた」という声をいただきました。



また、コマツ系協力会社のT工業所様では、リーダーが育たず離職率も高いという課題に対して6時間のワークショップを実施し、実は離職を考えていたリーダー2人が前向きに考えるきっかけを得たとご担当者から伺っています。


採ることと、辞めないこと。中小企業にとって、この二つは同じ経営課題の表と裏です。

レゴ®シリアスプレイ®を活用した研修の全体像や費用の考え方は、こちらのページでご紹介しています。





よくある質問(FAQ)


Q1. 適性検査を導入していますが、置き換えるべきでしょうか?


置き換えではなく、併用をおすすめしています。

適性検査は一般的な傾向を効率よく把握できる手段です。一方で、自社の風土や特定のメンバーとの相性は数値に出てきません。役割が違うため、両方あることで判断材料が厚くなります。



Q2. 学生がレゴ®ブロックを触ったことがなくても大丈夫ですか?


はい。

造形の巧拙を評価するものではないためです。認定ファシリテータが段階的にウォームアップを行いますので、初めての方でも自然に手が動き出します。むしろ「うまくつくれない」状態のほうが、その人らしい説明が出てくることもあります。



Q3. 社長ひとりで判断している状態でも導入できますか?


むしろ、そうした会社にこそ向いています。

ファシリテータが場を進行するため、社長は観察に専念できます。判断者が一人であっても、観察できる情報の種類が増えれば、判断の精度は変わります。事前の人物像の言語化にも第三者として関わりますので、そこで基準が整理されること自体に価値があります。



Q4. 何名から実施できますか?石川県以外でも対応していますか?


4名程度から実施可能です。

今回の事例は最終選考6名・2時間で行いました。石川県・金沢を拠点に、富山県・福井県を含む北陸全域を中心としながら、静岡県や関東など全国での実施実績があります。





最後まで読んでくださったあなたへ


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


書類でも、適性検査でも、面接でも埋まらないものがある。そのことを知りながら、それでも毎年決断しなければならない。中小企業の採用とは、そういう仕事だと思います。


今回の取り組みでいちばん印象に残っているのは、社長ご自身が持ち味カードとレゴ®ブロックを手に取って、「どんな新人に来てほしいのか」を言葉にしていた時間でした。


学生に本気を求める前に、選ぶ側が本気で準備する。当たり前のようでいて、忙しい経営者ほど飛ばしてしまう工程です。


私自身、家業の会社を22年経営し、44歳で会社整理という決断をしました。人を採り、育て、そして見送る場面も経験しました。採用の判断をひとりで背負う夜のことも、少しはわかるつもりです。


もし今、

  • 採用の判断を、いつも自分ひとりの勘で決めている

  • 書類も検査も面接もやっているのに、まだ足りない気がする

  • 一人の採用ミスマッチが、会社にとって重すぎると感じている


そんな感覚が少しでもあるなら、それは変化のタイミングが近づいているサインかもしれません。


自社の選考に合うかどうかは、まず手法そのものを知っていただくところからだと思います。



長年の勘は、決して軽いものではありません。ただ、その勘を裏づける材料が増えれば、判断はもっと確かなものになります。




👉 レゴ®シリアスプレイ®を活用した研修とは?費用・事例を見る


👉 レゴ®シリアスプレイ®体験会に参加する


👉 公式サイト|株式会社できる


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【著者プロフィール】

幸動力コーチ 杉本 嵩龍(すぎもと たかたつ)

株式会社できる 代表取締役。

「人と組織が幸せに働き続ける未来をデザインする」をミッションに、

脳科学(RAS®)・レゴ®シリアスプレイ®・コーチングを組み合わせた

対話と体感を重視した支援を行っています。

LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドと教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ。

延べ200社・4,000名以上の経営者・管理職・チームと向き合ってきました。

44歳での会社整理という挫折と、ゼロからの再出発を経験したからこそ、

経営者の孤独や、決断し続ける苦しさに、きれいごとなく寄り添えます。

現在は金沢市山間部・牧山町でヤギと猫に囲まれながら暮らしています。

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